【原始反射シリーズ】ATNR(非対称性緊張性頸反射)~頭を向けると腕が伸びる、“左右のクセ”のおはなし~
「うちの子、字を書くときに顔が机にくっつくくらい傾く」「歩いているとき、片方の腕だけあまり振れていない気がする」。前回は原始反射の基本をお話ししました。今回はその中から、姿勢の左右差や読み書きに関わりやすいATNR(非対称性緊張性頸反射)を取り上げます。
ATNRってどんな反射?
ATNRは、頭を横に向けると、顔が向いた側の手足が伸び、反対側が曲がるという自動的な動きです。よく「フェンシングのポーズ」にたとえられます。赤ちゃんを寝かせて顔を横に向けたとき、向いた方の腕がすーっと伸びていく——あの動きです。
この反射にも、ちゃんと役目があります。お腹の中で体を左右非対称に動かす練習、産道を回りながら生まれてくるときの手助け、そして生まれてからは「見たものに片手を伸ばす」というリーチ動作の前段階。赤ちゃんが自分の手を発見し、目と手を結びつけていくための、大事な入り口になっています。
役目を終えると、この反射は少しずつ脳の上の階層にバトンタッチされていきます(これを「統合される」と呼びます)。気をつけたいのは、卒業の時期を過ぎても残っているときです。
残っていると、こんなサインが出やすくなります
- 頭が傾いた方向の腕が、無意識にすーっと伸びてしまう
- 字を書くとき、顔が紙に近づいて体ごと傾いてしまう
- 左右どちらかに体が流れやすく、姿勢の左右差が定着している
- 目を左右に動かすのが苦手そう、片目ばかりを使っている様子がある
- 歩くときの腕振りが左右で不均等、片側だけあまり振れない
ATNRが残っていると、頭を動かすたびに腕の動きが“連動”してしまいます。本人は普通にしているつもりでも、頭と手を切り離して使うことに余分な力が必要になる。その結果、読み書きの姿勢が崩れやすかったり、体の使い方に左右差が出やすかったりする可能性があります。
じつは「歩き方」にも表れます
ここが、当校が歩行をとても大切にしている理由のひとつです。ATNRが残っていると、歩いている最中に頭が左右を向いたとき、その動きに腕振りが引っぱられてしまうことがあります。頭が向いた側の腕が伸び、反対の腕が曲がる——この反射のパターンが、本来のなめらかな腕振りの邪魔をしてしまうのです。
ですので、「腕の振り方が変だから、腕振りを練習させよう」と表面だけを見ても、なかなか変わらないことがあります。腕振りを整える前に、その奥にある反射の状態を見てあげること。土台から整えていく、という順番がとても大切です。
| 💡 サインが当てはまったからといって、その子に何か問題があるわけではありません。発達のスピードや道すじには個人差があります。成長曲線から少しずれているだけ、と考えてください。足りない経験を、これから足していけばいいんです。 |
おうちで今日からできること
ATNRの統合でカギになるのは、「頭の動き」と「手の動き」を切り離して使う経験、そして体の真ん中(正中線)をまたぐ動きです。難しく考えなくて大丈夫。遊びの中にたくさんあります。
- 右手で左の膝、左手で右の膝を交互にタッチする「クロスクロール」遊び。行進しながら、歌に合わせて楽しく
- ハイハイ、ずりばい、四つばい。手と足が交互に出る動きは、それ自体がとても良い練習になります
- ぎゅっと抱きしめる、胸の前で手を組む。体の真ん中に手を集める感覚を育てます
- 顔は正面のまま、目だけでゆっくりものを追いかける遊び(にらめっこや、動くおもちゃ探し)
ポイントは、つらいトレーニングにしないこと。笑いながらできる遊びのほうが、子どもの体にはずっとよく入っていきます。年齢や発達段階によって取り入れ方は変わりますので、無理のない範囲で始めてみてください。
より具体的な評価の方法やエクササイズの手順は、WGK講座の中で詳しくお伝えしています。
まとめ
- ATNRは「頭を向けると、向いた側の手足が伸びる」自動の動き。目と手を結びつける大事な入り口
- 卒業の時期を過ぎても残っていると、姿勢の左右差・読み書きの姿勢・腕振りの非対称として表れる可能性があります
- 整えるカギは「頭と手を切り離す動き」と「体の真ん中をまたぐ動き」。遊びの中で育てられます
次回は、四つ這いや座り姿勢に関わるSTNR(対称性緊張性頸反射)を取り上げる予定です。とにかく今できることから始めていきましょう!
子どもの歩き方と発育の学校 / Walking & Growth Kids Academy
学長 木津直昭
※本記事は一般的な発達のお話で、医学的な診断や治療を保証するものではありません。気になるサインが続く場合や心配な点がある場合は、小児科医やかかりつけの専門家にご相談ください。

