【原始反射シリーズ】STNR(対称性緊張性頸反射)~「W座り」と、椅子で崩れる姿勢のおはなし~
「椅子に座らせても、すぐ机に寝そべってしまう」「床に座るとき、いつも脚をW(ダブリュー)の形にしている」。前回はATNRのお話をしました。今回は、座る姿勢と四つ這いに深く関わるSTNR(対称性緊張性頸反射)を取り上げます。

STNRってどんな反射?
STNRは、首を上に向けると腕が伸びて脚が曲がり、あごを引くと腕が曲がって脚が伸びるという、頭の動きと手足がセットで連動する反射です。生後6〜9か月ごろに現れ、11〜12か月ごろまでに役目を終えていきます。
この反射の役目は、はっきりしています。ハイハイへの橋渡しです。赤ちゃんがうつ伏せから体を持ち上げ、腕で自分を支え、股関節を折りたたむ。その動きを覚えるための、いわば練習用プログラムです。そして、ハイハイを十分に経験した先に、立って歩くという次の段階が待っています。
つまりSTNRは、四つ足から二本足へ、赤ちゃんが重力に立ち向かっていくための土台を作ってくれているわけです。

残っていると、こんなサインが出やすくなります
- 四つ這いが不安定。頭を上げると腕が伸びて崩れてしまう
- ハイハイが「バニーホップ」(両膝をそろえてピョンピョン跳ぶような動き)になっていた
- W座り(両膝が内を向き、足が外側に開いた座り方)を好む
- 椅子に座らせても、すぐに机に寝そべるような姿勢になる
- 読み書きのとき、頭が机にどんどん近づいていく
- 猫背になったり反り返ったり、姿勢が行ったり来たりする

W座りは、体幹の力をあまり使わずに上半身を安定させられる、いわば「ラクな座り方」です。だからこそ子どもは自然とその形を選びます。裏を返せば、体の真ん中で自分を支える力が、まだ十分に育っていない可能性があるということです。
| 💡 W座りをしているからといって、その子に問題があるわけではありません。発達の道すじには個人差があります。成長曲線から少しずれているだけ、と考えてください。足りない経験を、これから足していけばいいんです。 |
「姿勢が崩れる」の裏側にあるもの
当校では、子どもの体を4つの柱で見ていきます。構造(骨や関節の並び)・外部環境(靴や椅子)・原始反射・栄養の4つです。
「姿勢が崩れる」という同じ一つのサインでも、その背景はお子さんによって違います。STNRが残っていることが大きい子もいれば、鉄やタンパク質が足りず、そもそも姿勢を保ち続けるエネルギーが不足している子もいます。実際には、複数の要因が重なっていることがほとんどです。
ですので、「背筋を伸ばしなさい」と声をかけ続けても変わらないことがあります。それは、お子さんのやる気の問題ではありません。見えている姿勢は結果であって、原因は別のところにあるからです。土台から整えていく、という順番が大切になります。
おうちで今日からできること
STNRを育て直すカギは、四つ這いの姿勢をたっぷり経験すること、そして頭の動きと手足の動きを切り離して使うことです。遊びの中にたくさんあります。
- 四つ這いでのトンネルくぐり、動物のまねっこ歩き。ハイハイの動きは、何歳になっても良い経験になります
- 四つん這いで背中を丸めたり反らせたりする「ねこのポーズ」遊び。呼吸に合わせてゆっくりと
- 右手で左膝、左手で右膝を交互にタッチする「クロスクロール」。頭は正面のまま、歌に合わせて楽しく
そしてもう一つ、すぐにできて効果が見込めるのが椅子の高さの見直しです。
- できるだけ深く座らせ、骨盤を立てるような意識で
- 太ももと床が平行になる高さに
- 足の裏がしっかり床につくこと。届かない場合は足台を置いてください
足が宙に浮いていると、体を支える土台がないまま座り続けることになります。姿勢が崩れるのは当たり前です。足台を一つ置くだけで、座り方が変わるお子さんもいます。
ポイントは、つらいトレーニングにしないこと。笑いながらできる遊びのほうが、子どもの体にはずっとよく入っていきます。年齢や発達段階によって取り入れ方は変わりますので、無理のない範囲で始めてみてください。より具体的な評価の方法やエクササイズの手順は、WGK講座の中で詳しくお伝えしています。
まとめ
- STNRは「ハイハイへの橋渡し」をする反射。四つ足から二本足へ進むための土台です
- 卒業の時期を過ぎても残っていると、W座り・椅子で崩れる姿勢・読み書きの姿勢として表れる可能性があります
- 整えるカギは四つ這いの経験と、足の裏が床につく椅子の高さ。どちらも今日から始められます
次回は、猫背や反り腰に関わるTLR(緊張性迷路反射)を取り上げる予定です。とにかく今できることから始めていきましょう!
子どもの歩き方と発育の学校 / Walking & Growth Kids Academy
学長 木津直昭
※本記事は一般的な発達のお話で、医学的な診断や治療を保証するものではありません。気になるサインが続く場合や心配な点がある場合は、小児科医やかかりつけの専門家にご相談ください。
